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エトセトラ

JB TOP50メンバー・芦之湖漁協理事 山木一人さんに聞く『釣りの魅力伝える難しさ、楽しさ。』

まとめ:バスマガ編集部

バスマガ編集部(以後BM) WFG(ワールドフィッシングガイドサービス)の本格的な活動がこの春からスタートしました。その活動コンセプトは『釣りの楽しさを伝える』ことです。少子高齢化社会を迎え、レジャーが多様化する中で、釣りの魅力や楽しさを伝えていくことは今後とても大切な活動になると思います。山木さんはバスプロとしての経歴も長いのですが、芦ノ湖漁協理事も務められて内水面漁場管理にも精通しておられます。あらゆる角度から釣り界を見てきた一人として、釣り人を育てていくための山木流提案をお願いします。

■ファッション志向が強い釣り人とどう向き合うべきか。

BM まず最初に、芦ノ湖の湖畔でアングラーズハウスヤマキ(レンタルボート店)を営まれてきて、これまでさまざまなタイプの釣り人と接してきたと思うのですが、釣り人自身が変化した部分ってありますか?

山木 釣り人自体に明らかな変化があって、純粋に魚釣りを楽しむというよりも、ルアーフィッシングに関してはひとつのファッションになっちゃってる傾向がありますよね。ここ数年でバス釣りを始めた人は特に「このメーカーが好き」「このブランドで揃えたい」という人が増えています。もちろんバス釣りが好きなんだろうけど、こだわりがありすぎると魚が釣れないんですよ(笑)。いろんなモノを試すことがなくなるから。
影響力のある人が雑誌や動画などで「今度の新製品はスゴイぜ!」っていったら、そればっかり投げちゃう。そのせいでいろんなことを工夫して楽しむ釣り人が減ってきたように思います。新しくバス釣りを始める人は業界の人が思っている以上に入ってきているんだけど、中間クラスの減少が特に目立つようになりました。

BM そのファッション指向の釣り人って、釣りが続かないの?

山木 それは・・・、僕らバスプロやメーカー次第ですよね。極端な言い方だけど、メーカーありきで釣りをしてくれているような人だと、そのメーカーがどれだけユーザーを大切にしていくかでしょうね。自分たちの会社を維持していくために売上を伸ばすことは必要なことだけど、ネタ的なルアーでブームを作って適当なルアーを次々と出しているようだとこの業界も終わっちゃうかもしれない。
最近は長く使えるようなプロパーな製品がなかなか出てこなくなったからね。ユーザーを無理やり引っ張っていると、それに付いていけなくなったり、飽きたりしたら釣りから離れてしまうと思うんですよ。昔のようにスタートの時点で純粋に魚釣りが好きという訳じゃないから。魚釣りが大好きになってからメーカーに興味を持ってくれるのはいいんですけどね。

BM うわ〜っ、最初から誌面に載せにくい話をありがとうございます。
でも、人気ルアーの抱き合わせ販売とか、製品力だけに頼っていた小売店は苦戦しているケースが目立つので、ユーザーを大切にしないと先が短いというのも分かりますよね。
バス釣りに関してだけど、管理釣り場や現場型のショップ、ボート店などからも初心者は入ってきているという話は聞くようになったけれど、以前のようにビギナー向けのイベントが少なくなって、ファンの集いみたいなのが多くなっているのは感じますよね。

山木 そうなんですよ。釣り具屋さんでイベントをやっても、名前を出してわるいけど「青木大介がきま〜す」とか、その有名人が好きな人だけ集めて、その人に関連する商品を売るという商売が増えてきている。お客さんにもっと釣り好きになってもらって、続けてもらおうという努力は小売店もメーカーも怠っているところが多いと思いますよ。まぁ雑誌も同じようなもんですけど。

BM 何か改善策はありますか?

山木 芦ノ湖のボート屋さんには今でも初心者はよく来るんですよ。だけどハードベイトだけしか使えない湖だから魚が釣れない。「魚釣りっておもしろいな」って思ってもらうにはどうすればいいかと考えて、僕は自分のルアーを作り始めました。セイラとかは投げて巻いているだけで付いてくる魚が見えるんですよ。釣れなくてもそれだけでワクワクする。僕らですら魚が付いてきたら「キタキタキタ・・・あ〜逃げられた・・・」とか、釣れなくてもすごく興奮する。初心者の人達には「こういうことをしたらドキドキ、ワクワクするんだぜ」ということを簡単に伝えることが一番大切だと思うんですよ。
プロの中には、実際には自分でもできていないようなことを格好つけて難しく解説しようとする人も多くて、それだとどうしても付いてこれない人が出てきちゃう。昔、自分が楽しかったと思えたことを体験させてあげれば、自然に釣りにハマってくれると思うんですけどね。

BM 今後、バスプロにはどのような活動が求められると思いますか? メーカーや小売業関連の選手はそれぞれに使命はあるでしょうが、「釣りのプロ」としてやらなければならないことは?

山木 いろんな立場の人がいるだろうけど、メーカーや小売店の人はどうしても売上を考えるのでしょうが、釣り人が増えれば売上は自ずと付いてくるんですよね。今はどんどん小さくなっているパイを取り合っているように見えるんです。
今回のWFGの活動にも繋がってくるんだけど、パスプロを職業として考えるのであれば、まだ釣りの本当の魅力を知らない人たちに釣りの楽しさを伝えていくことができなければメシを食ってはいけないですよね。そのためには自分自身に余裕を持って釣りを楽しんでほしいなと思います。自分が釣りを楽しんでいないのに、釣りの楽しさを伝えることはできないでしょ?
JBプロはトーナメントに出場することにはヤリガイを感じているだろうけど、7割ぐらいが釣りを楽しんでいないんじゃないかな。それではトーナメントの難しさやおもしろさを伝えることはできても、初心者を釣り好きにはさせられないですよね。
バスからソルトへ転向する人もいるけど、バス以外の釣りはやらないとか、トーナメントがあるから釣りをしている人も多いかな。手軽に楽しめるのにオフシーズンにアジやメバル、カマス、ヒラメなども釣りに行かない人が多いですよ。

BM あれ、そうなの?私の周りにいるベテランJBプロはいろんな釣りをする人ばかりなので意外ですよね。もっといろんな釣りを楽しんでいるのかと思っていたけど、そうではないんですね。

山木 釣り好きじゃないんですよ。バス釣りではなく、バスフィッシングやバストーナメントというスタイルが好きな人が多いんですよ。だから、釣り好きのバスプロが増えたら釣り好きが増えると思うんですよね。
イカやカマスがいい時期にソルトをやらないバスの仲間を誘って行くことがあるのですが、最初にやっつけるとまずは「自分はバスプロだ」という自負があるから言い訳するんだけど、そのうち悔しくて夢中になる。自分一人だとおもしろくないから他の仲間を誘ってまた釣りに行く。そんな感じで楽しみ方が広がればいいんじゃないですか?
話は前に戻るけど、メーカーも小売店もガイドもバスプロも、やるべき仕事の根底にあるものは同じで、「釣り人に楽しんでもらうこと」なんですよ。メーカーは本物の製品を作って、小売店は本物を選んで売ってあげれば、それがユーザーの楽しい釣りに繋がると思うんですよ。

BM ただ、90年代後半をピークに釣り人口が減り続け、釣り人口が800万人台まで落ち込んでいる状況下でパイを広げていくことは難しい課題ですよね。今後は釣りファンを増やすよりも質の高い熱い釣り人を育てていく方が大事になってくるのでしょうか。

山木 無理に熱い釣り人を作ったとしても冷めるからね。僕は反対に「暇だから釣りに行こうよ」という遊びにする方がいいと思っています。
スキーやって、スノボやって、波乗りやって、釣りもやってるような人は、釣りが自分の中の遊びの中の1つとして確立されているから残るんですよ。これまでの経験から、僕はそっちの人を増やす活動をしています。
最近はスタンダップパドルとかも頑張ってます。前に旧吉野川へ持っていったでしょ、ボードの上に立ってパドルで漕ぐやつ。サーフィンって波がないと暇だから、アレで釣りをするんですよ。
湘南や静岡のサーフィン仲間には近場にバス釣りをする場所があまりないからシーバスやヒラメ、コチを狙うことが多いし、千葉に行けば野池がいっぱいあるから「バス釣りやろうぜ」って声をかけたら、みんながバス釣りにハマってしまった。遊びの1つとして釣りを提案してあげるだけでのめり込んでしまうんですよ。サーフィンが本業の人たちも真冬のバストーナメントに40人、50人集まるし、そうなると自分の道具を買い始めてくれる。若い人が減って、遊びが増えているんだから、僕は遊びを分けて楽しめる人に釣りを広めていった方がパイは広がると思うようになってきました。「やることないから釣りに行こう」で十分ですよ。

BM 山木さんご自身は釣りを楽しんでいるのですか?

山木 自分自身では分からないものなんです(笑)。もの心ついたころから今の環境(芦ノ湖)で育ってきたから釣りは生活の一部で、寝たり、ご飯食べたり、風呂に入ったりと一緒なんですよ。でも、水路があれば覗き込むし、釣りをしている人がいれば何が釣れているか気になるし、釣れていたら自分でもやりたくなるから、釣りは好きなんでしょうね。

■これからは釣り場作りに釣り人も協力する時代。

BM 釣りの魅力を伝えるうえで最も大切なのが釣り場環境だと思うのですが、先進のゲームフィッシングのフィールドとして芦ノ湖ではどのような取り組みをしているのですか?

山木 極論をいえば、これも釣り人に楽しんでもらう釣り場作り、それに尽きるんですよ。岸さんもワカサギやヘラブナの放流をしているので分かるでしょ。
ただ、身内だから厳しいことをいうけど、芦ノ湖はぜんぜん努力が足りないような気がする。もっといろんな魚種を大切にしていったら、今以上に釣り人を楽しませることができるはずですよ。

BM あんなにいろんな魚種を釣らせているのに?

山木 外から見ればそうかもしれないけど、力を入れている魚種とそうでない魚種があって、今はトラウトとワカサギの放流に力を入れています。ブラックバスやヘラブナなど他の魚種でもしっかり釣り場作りをすれば、解禁期間中はいろんな魚種で釣り人を呼び込むことができるでしょ。釣り人自体が減っているんだから、いろんな魚種を大切にしていくべきですよ。
水産庁や自治体の方とも釣り場管理について話をする機会もあるのですが、全国的に見て「もっと漁協がしっかりしてほしい」っていう意見が多いですね。特にブラックバスの場合は漁業権免許がある4湖においては、賛否はあるかもしれないけど放流やイベントなどでもっと盛り上げてほしい。漁業権がない釣り場では地元の自治体もバス釣りをバックアップするのは現状として難しいですからね。

BM 先日も河口湖漁協の吉田三男組合長にお会いして、今年の6月とクラシックのときに2回予定しているNBCのショア大会に合わせて放流してもらえるように協力をお願いしてきたんですよ。放流直後は管理釣り場のようになってしまうけど、ショア大会に参加するビギナーにも楽しんでもらえたらと思ってね。

山木 プロ大会のときに放流されると困るけど、ショア大会のエリアに放流してもらうのはいいことですよ。ブラックバスの漁業権がない釣り場からすればうらやましい限りですからね。

BM 西日本の釣り場は東日本以上に漁協組織が弱体化しているので、もっと各地の漁協に頑張ってほしいですよね。ブラックバスの漁業権がない釣り場でも、他魚種の遊漁料よりもバス釣りの遊漁料や水面利用料の収入が上回っている釣り場も少なくないですからね。山木さんがいわれるようにいろんな魚種を大切にしていかないとこの先の漁協運営は難しくなる一方でしょうね。

山木 でもね、若い人が関わりづらい今の漁協の体質では組織の弱体化は避けられないですよ。遊漁料の回収にも行かなくなって収入が減り、漁協の運営が成り立たなくなって、川や湖の漁業権を放棄すれば変わる可能性はあるでしょうけど。漁業権が一旦消滅した後に、本気でいい釣り場を作ろうとする若い人たちがそこに入って、協力金を徴収して自治体に納め、その金で放流活動をして釣り場を甦らせ、地元を活性化させるような実績を残せばまた漁業権を復活させることはできるでしょうからね。

 

BM 釣り場の管理も山木さんがいわれるように釣り人を楽しませる釣り場、ワクワクする釣り場を作ることができればまだまだ釣り人は増やせますよね。3年前だったかな、山木さんに協力してもらって芦ノ湖でワカサギの増殖方法について勉強させてもらったとき、一番最初に私と一緒に芦之湖漁協の施設を視察させてもらった室生ダム(奈良県)の漁協監視員をしている方がスゴいんですよ。山木さんにも会ってもらった平崎大介さんなんだけど、彼はもともと漁協組合員ではなく熱狂的なヘラ師で、ダムを管理していた漁協は県漁連から脱会し、遊漁料を徴収する人がいなくなった5〜6年前から監視員を務めているのですが、毎年このダムを訪れる人が増えているんですよ。ヘラブナ釣りは他の釣りよりも厳しい環境にあるのに、放流量を増やして誰もが釣りやすいポイントを地道に整備することで人が集まるようになったんですよ。そんな熱心な監視員だから釣り人も協力的で、ほとんどの釣り人が釣り場環境がよくなってほしいと願っているから、大会やフォトトーナメントなどのイベント参加費はすべて放流資金に回しても誰も文句をいわないし、とてもいい釣り場になってきました。

山木 外部のヤル気のある人に釣り場管理を任せることで成功した例ですよね。ただ、ほとんどの漁協は組織の運営が苦しくなったとしても、漁業をする権利は手放さないし、管理をよそ者に任せるようなことはほとんどしないですよ。そこが今の内水面の課題です。

BM 管理者がいなくなった釣り場って、内水面の場合は荒れますよね。漁業権を放棄してアユが生息している川なんて投網を打ち放題だし、マナーの低下でトラブルも増えるでしょうからね。資源管理という点ではブラックバスは生き延びていくだろうけど、放流をしなければ資源を確保できない魚種の釣りはなくなるでしょうからね。

山木 ワカサギを放流したり、イベントしたりといろんなビジネスモデルは作れるんだけど、年配の組合員は新しいことにチャレンジしてくれない。釣り人は自分たちが釣りを楽しむんだからボランティア活動とはいえないかもしれないけど、漁協組織が衰退して新しい体制にかわるのなら、いろんなことを働きかけるべきですよね。釣り人から地元に提案したり、話し合いの場を持てれば、漁協の役割を果たすような部署が自治体内できるかもしれないですからね。

BM 内水面の釣り場は釣り人が減少すると管理が難しくなるけれど、ワクワクする釣り場は釣り人が協力して作っていくということですね。本日は釣りの楽しみ方、楽しませ方の話、ありがとうございました。  


この記事はバスマガジン2014年春号に掲載されたものを転載しています。

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